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第75話 竜が支配する島 ~アグリサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-05-24 20:41:23

ジェナさんと面会した翌日--

俺たちは指定された港の船着き場に向かった。

ジェナさんが手配した船に乗ってドラゴンの巣窟である島へ行くためだ。

船着き場に着くと、ジェナさんが出迎えてくれた。

「おーっ!

 逃げずによく来たな!

 立派、立派!」

ジェナさんは手痛い挨拶をしつつ、笑顔で迎えてくれた。

「ワシらが逃げるとでも思ったのか、お前は」

ゾルダは真に受けてジェナさんに突っかかっている。

「いやー、冗談だよ冗談。

 真面目に聞くとは思わなかったよ」

頭を掻きながら照れくさそうにジェナさんは笑った。

ゾルダは昨日のことを根に持っているのかもしれない。

ゾルダ本人と認められなかったことを。

「ジェナさんが直々に来て案内してくれるのですか?」

「いやー。

 あたいは行かないよ。

 ここで、行く前にちょっと竜天島について話しておこうと思って」

「竜天島?」

「ドラゴンの巣窟の島のことだよ。

 ドラゴンの巣窟と言っても、他の魔物も多くいる。

 ただ他の魔物は正直ドラゴンの餌だな」

「ドラゴンの餌……」

「そうそう。

 そこのドラゴンたちはそれなりの知能があるから、全滅しない程度に他の魔物を生かしている。

 じゃないと、食い扶持がなくなるからね。

 適度に繁殖させて、余剰分を食っている。

 だから滅多に島の外に出ない。

 ただ、まれにその生態系が崩れて、外に狩りにくることがあるんだ。

 それが百数十年前だったかな」

「ほぅ……

 賢い奴らじゃのぅ」

「その時に我が家の秘宝を持っていかれてそのままってところだ」

どうやらかなり賢いドラゴンたちのようだ。

自分たちが死なないように、餌である魔物も管理している。

人間並みの知能に感じる。

「我が家の秘宝については、これ」

ジェナさんはそう言うと、秘宝が書かれた絵を手渡してきた。

見させてもらうと、大きな水晶のような球が台座に置かれている絵だった。

「大きさはどのくらい?」

「えーっと、あたいの背の高さぐらいあるかな。

 ただあたいも実物は見たことないからわからないんだ。

 この絵が頼りってことで」

「ようお前がわからんものをワシらに頼めるのぅ……」

「マリーよりもだいぶ大きいですわね。

 それを持って帰ってくればいいってことでしょうか」

マリーはジェナさんに対して再度確認を取った。

「おうとも。

 是非にお願いしたい」

「わかりまし
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